最近、読書感想文のような記事が多いですが、今回もそんな感じでやっていきます。
今回ご紹介するのは唯川恵の『愛なんか』です。女性の心理というか情念というものがよく分かる短編集であります。
私は恋愛経験値が無さすぎて、友達と恋バナをするはめになったときは「幼稚園の頃、同じさくら組の男の子から結婚してくれと言われたのが人生最大のモテ期だった」くらいしか話のネタがありません。
そんな私が大人の恋愛について学ぶために(?)いくつか恋愛小説を読んだところ、唯川さんの描く、女性のドロッとした何とも言えない心の機微に、思わず心のイイね!ボタンを押していました。
この『愛なんて』という本は12本の短編集でして、どの話も自立した大人の女の洗練された生活(表社会)の裏にある、仄暗く深〜い情念がたち込める(こう書くとホラー映画みたいだな)、アンダーグラウンドを描いているような感じがします。
私が特に好きなのは『偏愛』という話です。タイトルの通り、片想いをこじらせてしまった女性の話なのですが、オチを含めてかなり印象に残りました。
以下ネタバレ↓
主人公は山下という、仕事は出来るが、好きになれる男性がおらず、陰で処女ボケと呼ばれている34歳の女性。(雑な紹介で申し訳ない。)
彼女は「本当に好きな男と結婚する」というシンプルな望みを持っていて、過去あった結婚のチャンスも逃している。
そんな彼女が黒田という年下の男性社員に恋をしたのだが、年の差や彼にはもっと相応しい人がいる等の理由から、陰からこっそり彼を見ているばかり…
というか、普通にストーカーをしている。社内のパソコンから彼の個人情報を調べたり、彼の家の近くに隠れ、こっそり郵便物のチェックをしたり、彼の帰りを待ったりしている。
彼に直接アプローチをせず、ひっそりと歪んだ愛情行為(普通に犯罪ですよ!)をしている山下さんに、私は引きつつも魅力を感じてしまった。
彼女は物陰からこっそり彼を見詰めるだけで、毎日に張りが出るという。それどころか、自身は何も求めず、彼から愛されなくても、愛していればそれだけで自分は生きてゆけるというのだから驚きです。
何というこじらせ片想い。しかし彼はそんな山下さんの想いには全く気付かず、モテ男なのか色んな女の子と遊んだり噂になっていたりします。
これには山下さんもグギギ…とハンカチを噛みちぎる勢いで切れるかと思いきや、若くて可愛い、彼の隣に立って自然に映る女であれば致し方ないと思っています。
それどころか、その女の子と仲良くなって更に彼の個人的な情報を引き出すつもりでいます。怖すぎる。だが私からすれば、このこじらせっぷりが一周回って愛おしくなってしまうんだから不思議である。
そして肝心なオチですが、なんとそんな彼の本命(?)は八木という、山下さんより年上で、バツイチで、だらしなくて、山下さんを陰で「処女ボケ」などと呼ぶイヤ〜な女でした。
すごく皮肉の効いた話ですよね…なんで彼は八木さんを選んだのかは不明ですが、山下さんの受けた心のダメージはいかばかりか…。
そして最後のシーン。山下さんがたまたま備品倉庫で八木さんと居合わせた際に、ある事を思いつきます。
そして脚立の上にいる八木さんに向かって、ダッシュで台車で突っ込むところでこの話は終わります。
凄いっすよね。客観的に見れば山下さんのやっていることは滅茶苦茶なんですが、山下さんの心情を読んでいくと応援したくなるというか。
他にいくらでも彼と仲良くなる方法はあるはずなのに、よりによってそれ選ぶ?という選択ばかりするというか…。
ま、これに共感している私もこじらせている感が否めないのですが、お巡りさんの世話になるような事だけはしないようにしたいと思います。ははは。
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